令和元年(2019年6月25日施行)建築基準法改正におけるポイント、防火・準防火地域に建てられる耐火建築物等の基準の見直しです。
今までは防火地域・準防火地域の面積や階数など規模によって求められる建築物(耐火建築物・準耐火建築物)の性能に制限を持たせていました。
そこへ『延焼防止建築物』・『準延焼防止建築物』という新たな基準が設けられています。
同時に防火地域(旧法61条)と準防火地域(旧法62条)及び外壁の開口部の防火戸(旧法64条)が防火地域及び準防火地域内の建築物(新法61条)にまとめられています。
改正点のまとめ

・『延焼防止建築物』・『準延焼防止建築物』という新たな基準の追加
⇒内部の柱などに木現しなどが採用可能に
・防火地域(旧法61条)・準防火地域(旧法62条)・外壁の開口部の防火戸(旧法64条)が防火地域及び準防火地域内の建築物(新法61条)に統一。屋根の構造を定めていた旧法63条は新法62条へ。
防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備
改正の概要は下記の通り
改正前はすべての壁・柱等に対し、一律に耐火性能を要求されていましたが、外壁や窓の防火性能を高めることにより、内部の柱等に木材を利用できる設計が可能となりました。法第61条では、「壁、柱、床、その他の建築物の部分及び防火設備について、通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない」とされています。
① 3階建ての耐火建築物相当(防火地域/準防火地域の1,500㎡超)の建築物
共同住宅、ホテル等の場合、主要構造部等への要求性能について、外壁は90分準耐火構造、外壁開口部は20分防火設備、間仕切壁、柱などは60分準耐火構造が求められ、条件となる仕様は、延べ面積3,000㎡以下、外壁の開口部はセットバック距離に応じた開口率算定やスプリンクラー設備の設置などその他告示で定められています。
セットバック距離に応じた開口率の算定については告示に定められており、各階における外壁の開口部の面積の合計の当該外壁の面積に対する割合が、告示の表の区分に応じて、それぞれ同表に定める数値以下であることとされています。
またセットバック距離とは、当該外壁の開口部から隣地境界線、当該建築物と同一敷地内の他の建築物(同一敷地内の建築物の延べ面積の合計が五百平方メートル以内である場合における当該他の建築物を除く。)との外壁間の中心線又は道路中心線までの水平距離を表すものとする、とされています。
② 3階建ての準耐火建築物相当(準防火地域)の建築物
準防火地域における3階建ての建築物(延べ面積500㎡以下)については、改正前の令第136条の2の基準(防火構造等)と同一です。
出典:https://www.bvjc.com/

改正部分を条文でチェック
建築基準法
(防火地域及び準防火地域内の建築物)
第61条
防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
建築基準法施行令(防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準)
(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
第136条の2
法第六十一条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 防火地域内にある建築物で階数が三以上のもの若しくは延べ面積が百平方メートルを超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が四以上のもの若しくは延べ面積が千五百平方メートルを超えるもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条各号又は第百八条の三第一項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第百九条の二に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第八十六条の四各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の主要構造部及び外壁開口部設備(以下このロ及び次号ロにおいて「主要構造部等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
二 防火地域内にある建築物のうち階数が二以下で延べ面積が百平方メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が三で延べ面積が千五百平方メートル以下のもの若しくは地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下のもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条の二各号又は第百九条の三第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
三 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等に限る。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が第百八条各号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、当該外壁開口部設備が加熱開始後二十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであること。ただし、法第八十六条の四各号のいずれかに該当する建築物の外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分並びに外壁開口部設備(以下このロにおいて「特定外壁部分等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定外壁部分等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
四 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等を除く。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
告示が「延焼防止建築物」と「準延焼防止建築物」を語る上では必須となります。
告示(国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの)(法61条より)
①「延焼防止建築物」とは建築基準法施行令第136条の2第一号ロの基準に適合する建築物
②「準延焼防止建築物」とは建築基準法施行令第136条の2第二号ロの基準に適合する建築物
各号イにて上記のような新基準が示されました。
○第一号は、旧法において、「耐火建築物」とすることが求められていた規模
○第二号は、旧法において、「準耐火建築物」とすることが求められていた規模
○第三号は、旧法において、「外壁・軒裏の防火構造と延焼の恐れのある部分の外壁開口部に片面防火設備を設けた建築物」とすることが求められていた規模
○第四号は、旧法において、「延焼の恐れのある部分の外壁開口部に片面防火設備を設けた建築物」とすることが求められていた規模
「延焼防止建築物」とは「ロ」の部分となり、「イの技術的基準による建築物と同等以上の延焼防止性能を確保するために必要な技術的基準」となります。
なお、「イ」については、旧法において規定されていた技術的基準となります。
さいごに
建築基準法の改正について情報源である国交省のWebサイトを必ず確認しておきましょう。
実務で僕もお世話になっているのがこの本。一冊持っておくと便利です。
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