日本の木造建築で主流になっている工法には、大きく分けて在来工法と2×4工法があります。
どちらも鉄骨やコンクリートよりも低コストで、軽くて強度があることから、日本の戸建住宅で最もポピュラーな構造となっています。
ですが、そもそもこの2つの構造って具体的に何が違っていて、それぞれにどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
そこで本記事では、

木造住宅を建てたくてどちらの構造にするかで悩んでいるんだけど、それぞれの違いって何?
といった疑問にお答えします。知識として覚えておくだけでもタメになると思いますよ!
コンテンツ
そもそもの木造住宅への心配
まずはそもそも木造建築物についてよく聞く心配についてです。
シロアリの被害がありそう

木造住宅を苦しめる一つの要因として挙げられるのが、シロアリによる侵食です。昔の住宅は「布基礎(ぬのきそ)」といって土台の下のみ基礎があって、他は土が見えている状態でした。この状態ではシロアリが地面から這い上がって来ます。

現在は「べた基礎」が主流になっています。べた基礎は建物の下を全てコンクリートで覆う工法のため、シロアリが地面から出てきてもそこにはコンクリートの壁があり、木造部分まで上がって来ることはほぼ不可能です。そしてべた基礎には、建物の荷重を分散させ、建物を安定させる効果もあります。
もう一点、建築基準法によって地盤から1mの土台・柱・筋交いに防蟻剤の散布が求められており、30年効果が持続するものもあります。これもシロアリから住宅を守るための技術の進歩です。
これらによって現在の木造住宅はシロアリの被害から守られています。
木はすぐに燃えそう
構造体が「木」で出来ているので、火事になったらすぐに燃えて倒壊してしまいそうという心配があると思います。ですが、適切な被覆をすることによって防火地域でも建築が可能になります。
木材が燃えるのは木の外側の部分で、中心部は燃えにくい材料です。
木は燃えると炭になりますが燃えた部分が炭化層となると、それ以上中に酸素が入ってこないよう盾の役割をします。なので部材を太くしたり、周囲を被覆することで、燃え切らない構造躯体を作る事ができます。
防火地域でも木造で建てられる階数が緩和されたりと、適切な処理をする事で高い防火性能を持つことが認められています。
耐久性が弱い?
木造住宅は3、40年程度で取り壊して新しくする。といったイメージが定着しているかもしれません。ですが、木造の耐久性は全くそんなものではありません。
それを象徴するのが日本最古の木造建築物である法隆寺です。約1300年もの間現存しており、日本で初めて「世界文化遺産」にも登録されました。
また、現在は古民家が流行っているように、手入れをすれば長い期間住むことが出来ます。
皆さんが持つイメージは設備や内装の更新に伴うリフォームや、建て替えの印象に依るものかもしれません。
それぞれのルーツを追う
在来工法(=木造軸組工法)のルーツ
在来工法は本来の名称を木造軸組工法といいます。
名前に「在来」と入っているように、古くから日本で取り入れられてきた伝統的な工法です。起源は縄文時代などに建てられた竪穴式住居だそうです。ここまで遡るんですね。すなわち柱を立てて、その柱をつなぐように横架材(梁)を渡します。力を面ではなく軸で支える構造という仕組みです。ちなみに構造を見るのは同じく縄文時代の掘立柱建物の方が分かりやすいと思います。

この様に柱を立てて、梁を渡して構造を作っています。この時代は土を掘ってそこに木の柱を直接刺すだけでしたが、木は水に濡れると腐食すしてしまいます。なので現在はコンクリートの基礎にきちんと乗せましょうという事になっています。
2×4工法(=木造枠組壁構法)
2×4工法は本来の名称を木造枠組壁構法といいます。
起源は19世紀の北米で、開拓者が自ら簡単に作る為のキットハウスがその原形とされています。その後アメリカ全土に普及したそうです。名前に「枠組」、「壁」とあるように、力を軸ではなく面で支える構造です。

簡単言うとダンボール箱のような感じです。このダンボールのように面を組み合わせて箱を作る事で構造が成り立っています。ちなみに住宅の場合は採光が必要なので、段ボールに穴をあけるようなイメージです。
続いて、それぞれの工法の特徴についてです。
在来工法(=木造軸組工法)の特徴
・基本構造⇒柱と梁による軸で支える構造
・多くの部材を用いて順次よく組み立てていく為、高い技術力が必要。
在来工法のメリット
・歴史の長い伝統的な工法の為、殆どの業者で建築可能。大工さんの数も多い。
・軸で支える為、柱の位置や窓の位置、大きさなど、設計自由度は比較的高い。
・軸で成り立っているため、将来の変更や改造が比較的容易。悪くなった部材を部分的に取り換えることも出来る。
・日本の伝統的な和室である真壁造りが計画出来る。
在来工法のデメリット
・軸で支える構造のため、耐震・耐風力は2×4工法よりは劣る。
・システム化された2×4工法と比べて大工さんの手によって品質が左右される。
・2×4工法よりも多くの部材を組み立てていくため、比較的工期が長い。
※近年は構造材のプレカット化(予め工場でカットして現場に運ぶ)を行っている会社が多いので、工期の差はあまり無くなったと考えられます。
2×4工法(=木造枠組壁構法)の特徴
・基本構造⇒壁や床による面で支える構造
・規格化された材料でマニュアルの通りに造る為、高い技術が必要ない。
※自作で2×4の家を建てている一般の方もいます。
2×4工法のメリット
・面で支える事から、耐震性・耐風性は高い。
・面の多くなる工法のため、防火性能で有利。
・面を組み合わせて作る構造のため、高気密・高断熱である。
・あらかじめ組み立てた面を現場で組み立てるため、全体的な工期が比較的短い。
2×4工法のデメリット
・面で支える為、耐力壁や窓の位置、大きさなど制約があり、在来工法よりは設計自由度が劣る。
・規格が決まっており、面で成り立っているため、将来の間取り変更がしにくい。(耐力壁線の問題等)
・(在来工法よりも)会社によっては対応できないところもある。
それぞれの特徴を表でまとめると
この表はあくまでも、標準的な構造自体の比較を示したものです。現在はメーカーごとに独自の工法や基準を持っており、同等の性能レベルを発揮することが可能となっています。
比較対象\工法 | 在来工法 | 2×4工法 |
---|---|---|
基本構造 | 軸で支える | 面で支える |
業者数 | 〇 | |
設計自由度 | 〇 | |
可変性 | 〇 | |
耐震・耐風性 | 〇 | |
防火性能 | 〇 | |
断熱・気密性 | 〇 | |
工期 | 〇 |
最近では技術力によって木造住宅のメリットは更に伸び、デメリットを解消することが出来るようになっています。2×4工法を扱う業者も増えていますし、設計の自由度についても全棟構造計算をして、出来るだけ自由な間取りを可能にしている所もあります。
在来工法についても耐震・耐風性を高める為に、筋交いだけでなく柱と柱の間に構造用面材を貼ることで、力を面でも捉えるのが基本になっています。防火性能についても、素材の選び方によって十分に必要な性能は確保できます。
標準的な特徴で一概に優劣が付くのではなく、お互いに作り方次第で十分同等レベルで建築が可能です。
まとめ
以上、在来工法・2×4工法の違いと、メリット・デメリットをご紹介しました。現在の木造住宅は技術の進歩により、以前よりも格段に安全で住み良いものになっています。それぞれの特徴を知って、後悔の無い家づくりをしていきたいものです。
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